フィリピン人を特定技能で採用するには、出入国在留管理庁での在留資格の手続きに加えて、フィリピン政府側の手続きが必要です。フィリピン側の流れを知らないまま採用活動を始めると、「内定を出したのに出国できない」「COEの有効期限が切れてしまった」といった事態になりかねません。
この記事では、出入国在留管理庁が公表している案内をもとに、受入企業が行う「特定技能の手続き」を順番に整理しました。

全体像:日本側とフィリピン側の手続きが並行して進みます
| No. | 手続き |
|---|---|
| 1 | 募集取決め(RA)の締結・公証 |
| 2 | MWOへの書類提出・審査 |
| 3 | MWOでの面接 |
| 4 | DMWへの雇用主登録 |
| 5 | 雇用契約の締結 |
| 6 | 在留資格認定証明書(COE)の交付申請 |
| 7 | 査証(ビザ)申請 |
| 8 | 出国前オリエンテーション(PDOS) |
| 9 | 健康診断 |
| 10 | OEC(海外雇用許可証)の取得 |
| 11 | 入国・就労開始 |
ポイントは、雇用契約(No.5)を結ぶ前に、フィリピン側の手続き(No.1〜4)を終えておく必要があることです。
ステップ1:送出機関と募集取決め(RA)を結ぶ
フィリピンの制度では、フィリピン政府の認定を受けた送出機関(PRA)を通じて人材を募集することが原則です。受入企業は送出機関と、お互いの権利と義務を定めた募集取決め(Recruitment Agreement)を結びます。
募集取決めは、日本の公証役場で署名の認証(公証)を受けてから提出します。契約する送出機関が認定を受けているかどうかは、DMWのサイトで公開されている認定送出機関の検索で事前に確認しておきましょう。
ステップ2:管轄のMWOへ書類を提出し、審査を受ける
次に、雇用契約書のひな形、公証済みの募集取決め、求人依頼書(Manpower Request/Job Order)などを、管轄のMWOに提出します。管轄は事業所の所在地で決まり、東日本を中心に、沖縄を含む19都道府県はMWO東京、愛知県を含む28府県はMWO大阪です。
書類は各MWOの所定様式で作成し、A4サイズ・タイプ入力・原本署名といった体裁のルールにも従う必要があります。MWO東京は、書類に不備がない場合の標準処理期間を10〜15営業日としています。書類の詳細はMWO申請の必要書類一覧で整理しています。
ステップ3:MWOで面接を受ける
書類審査の後、受入企業の代表者または委任を受けた従業員がMWOに出向き、労働担当官による英語の面接を受けます。
注意したいのは、この面接をコンサルタントや行政書士、登録支援機関が代わりに受けることは認められていない点です。通訳を同席させることはできるため、英語に不安がある場合は想定質問を事前に整理し、通訳の手配も含めて準備しておくと安心です。必要に応じて、MWOが事業所の実地調査を行うこともあります。
ステップ4:DMWに雇用主として登録する
審査と面接で問題がなければ、MWOの認証印が押された書類一式と推薦書(Recommendatory Memorandum)が受入企業に郵送されます。これを送出機関を通じてフィリピン本国のDMWに提出すると、受入企業が雇用主として登録され、求人情報も登録されます。
登録後は、DMWの認証印が押された雇用契約書のひな形が送出機関経由で戻ってきます。ここまで終えると、フィリピン人材の採用活動を本格的に進められます。
すでにDMWに登録済みの企業は、原則としてステップ1〜4を繰り返す必要はありません。ただし、登録した内容から契約条件を変える場合や、採用人数を増やす場合は、求人依頼書の承認手続きがあらためて必要です。
ステップ5:雇用契約を結ぶ
送出機関が、登録された求人情報をもとに人材を募集します。受入企業は紹介を受けた候補者と、特定技能の雇用契約を締結します。
ステップ6〜11:COEの申請から入国まで
フィリピンから新たに呼び寄せる場合は、ここから日本側とフィリピン側の手続きが並行して進みます。
- 在留資格認定証明書(COE)の交付申請:受入企業が地方出入国在留管理官署に申請し、交付されたら本人に原本を送ります。
- 査証申請:本人が在フィリピン日本国大使館でビザを申請します。
- 出国前オリエンテーション(PDOS):OWWA(海外労働者福祉庁)が実施する半日程度の講習で、申込みは送出機関を通じて行います。
- 健康診断:送出機関を通じて申し込み、半日程度で終わります。ビザ申請・PDOS・健康診断は同時に進められます。
- OEC(海外雇用許可証)の取得:ビザ取得・PDOS受講・健康診断の後、送出機関を通じてDMWに申請します。OECがないとフィリピンを出国できません。
- 入国:上陸審査を経て、「特定技能」の在留資格で入国します。
日本に住んでいるフィリピン人を採用する場合
留学生や技能実習を修了した方など、すでに日本にいるフィリピン人を特定技能で採用する場合も、ステップ1〜5(募集取決め・MWO申請・面接・DMW登録・雇用契約)は同じように必要です。その後、本人が「特定技能」への在留資格変更許可申請を行います。
また、在留資格の変更後にフィリピンへ一時帰国し、日本に戻る際にも、フィリピン出国時にOECが必要です。「国内での採用だからフィリピン側の手続きは不要」というのは、よくある誤解です。
つまずきやすい4つのポイント
1. COEの有効期限は交付から3か月
PDOSの申込み時とOECの申請時に、COEが有効期限内である必要があります。COEを申請する時期は、フィリピン側の手続きにかかる期間を見込んで逆算しましょう。
2. MWOの面接は代理で受けられない
代表者か、委任を受けた従業員が出向く必要があります。日程の調整は早めに始めましょう。
3. 申請は「人数枠」で行う
求人依頼書で申請した人数を超えて採用する場合は、追加の申請が必要です。今後の採用予定も含めて人数を考えておくと、手戻りを防げます。
4. 書類同士の記載が食い違う
職種名、採用人数、給与額、勤務地が、雇用契約書・求人依頼書・会社資料の間で一致していないと、差し戻しの原因になります。
まとめ
フィリピン人の特定技能採用は、日本側の在留資格の手続きの前に、募集取決め・MWOの審査と面接・DMW登録というフィリピン側の手続きを終えることが出発点です。全体の順番と期限を最初に押さえておけば、入社予定日からの逆算がしやすくなります。
採用にかかる費用はフィリピン人を特定技能で採用する費用、書類の準備はMWO申請の必要書類チェックリストもあわせてご覧ください。
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本記事は2026年10月時点で公表されている情報をもとにした一般的な解説であり、法的助言ではありません。各MWOの運用は変更されることがあります。最終的な要件は必ず各MWO・DMW・出入国在留管理庁の公式情報でご確認ください。当サイトは民間のサポートサービスであり、DMW・MWOの公式サイトではありません。